ビジネス留学中のリモートワークは、留学先のビザや滞在資格、仕事内容、雇用主の所在地によって、できる場合とできない場合があります。日本の会社の仕事をオンラインで行うだけでも、留学先の国で「就労」と判断される可能性があるため、「海外の会社から給与を受け取っていないから問題ない」とは限りません。
実際に始める前に、留学先の入国管理当局や大使館、学校の担当窓口へ、滞在資格で認められる活動かを確認してください。
ビジネス留学中のリモートワークが難しい理由
リモートワークの可否は、仕事をする場所である留学先の国のルールによって決まるからです。雇用契約が日本にあり、給与が日本の口座に振り込まれていても、留学先で実際に業務を行えば、現地での就労と扱われる可能性があります。
特に、次の条件によって判断が変わります。
- 留学先の国と地域
- 学生ビザ、観光目的の滞在、デジタルノマド向けの滞在資格など、滞在資格の種類
- 仕事をする相手が日本企業か、現地企業か
- 給与を支払う会社の所在地
- 仕事内容と、現地で得られる利益や顧客の所在地
- リモートワークを行う期間
- 学校への出席や授業への影響
このため、「ビジネス留学ならリモートワークができる」「学生ビザなら一切できない」と一律には判断できません。
ビジネス留学中にリモートワークが認められる可能性があるケース
リモートワークが認められる可能性があるのは、滞在資格の条件に合っており、仕事内容や勤務先についても制限に抵触しない場合です。ただし、次の例はあくまで判断材料であり、許可を意味するものではありません。
留学先の制度が、外国企業向けのリモートワークを認めている場合
国によっては、一定の条件を満たす外国企業の従業員や個人事業主を対象に、リモートワーク用の滞在資格を設けています。対象となる収入、勤務先、滞在期間、保険などの条件は制度ごとに異なります。
このような制度を利用する場合も、ビジネス留学の学校やコースに通えるか、授業への出席条件を満たせるかを別に確認する必要があります。
滞在資格の規定で、一定範囲の就労が許可されている場合
学生向けの滞在資格でも、就労時間や雇用主、就労開始前の許可などに条件を付けて働ける国があります。しかし、許可される仕事が現地の雇用契約を前提としており、日本企業のリモートワークが対象になるとは限りません。
「週に何時間まで」という制限がある場合も、リモートワークにそのまま適用できるとは限らないため、時間数だけで判断しないでください。
学校や研修の一部として行う活動である場合
留学プログラムに含まれる企業プロジェクトやインターンシップは、通常の副業や在宅勤務とは別の扱いになることがあります。学校が正式に認めた活動でも、滞在資格や労働許可の条件を満たす必要があります。
観光目的の滞在や学生ビザでの仕事は要注意
観光目的の滞在では、現地企業で働くことだけでなく、外国企業の業務を現地で行うことも問題になる場合があります。短期間の作業であっても、就労に当たらないと自己判断しないことが大切です。
学生ビザの場合も、学校に通えることと、自由にリモートワークできることは別です。学生ビザは学業を主な目的とする滞在資格であり、出席率や就学状況、就労時間などの条件が付くことがあります。
ビジネススクールや語学学校など、コースの種類によって滞在資格や出席要件が異なることもあります。申し込み前に、学校へ次のように具体的に質問してください。
- 日本企業の従業員が、授業時間外にオンライン業務を行えるか
- その業務に学校側の許可や書類が必要か
- 就労許可や滞在資格に関する相談窓口があるか
- リモートワークによって出席率や在籍条件に影響が出るか
リモートワークを始める前に確認する5項目
可否を判断するときは、ビザだけでなく、税金や雇用上の問題も確認します。次の順番で情報を整理すると、確認漏れを減らせます。
- 滞在資格を確認する。ビザの種類、許可される活動、就労制限、滞在期間、許可申請の要否を確認します。入国時の説明だけでなく、発給された書類や政府機関の案内を確認してください。
- 仕事内容を整理する。勤務時間、業務内容、顧客や取引先の所在地、会社との契約形態を一覧にします。単に「日本の会社の仕事」とまとめず、現地の顧客対応や営業活動があるかも分けて考えます。
- 学校の規則を確認する。授業時間との重複、出席率、在籍条件、学業への影響について、学校から書面で回答をもらいます。
- 税金と社会保険を確認する。滞在期間や居住者の判定によって、所得税や社会保険の扱いが変わる可能性があります。日本側の会社の給与処理だけで完結するとは限りません。
- 雇用主に確認する。海外から勤務することを会社が認めているか、情報セキュリティ、労災、勤務時間、個人情報の取り扱いを確認します。
入国管理や就労許可に関する判断は、学校の担当者だけでなく、留学先の政府機関や大使館などの公的な窓口に確認するのが安全です。税務や社会保険については、対象国と滞在期間を伝えたうえで専門家に相談してください。
リモートワークをするときに起こりやすい問題
滞在資格の条件に違反する
許可されていない就労と判断されると、滞在資格の変更、更新、再入国などに影響する可能性があります。特に、観光目的の滞在や、就学以外の活動を制限する学生向けの滞在資格では注意が必要です。
学校の出席条件を満たせなくなる
仕事を優先して授業を欠席したり、オンライン会議のために授業へ集中できなかったりすると、学校の在籍条件に影響することがあります。働けるかどうかだけでなく、決められた出席率を維持できるかも確認しましょう。
税務や会社の手続きが複雑になる
海外から勤務すると、所得税の申告、給与計算、社会保険、会社の現地での義務などが問題になることがあります。滞在期間が長いほど、税務上の居住者判定や二重課税の確認が必要になる場合があります。
勤務先の情報を海外から扱えない
会社の規定によっては、国外からの勤務、顧客情報へのアクセス、社内システムへの接続を禁止していることがあります。VPNなどの技術的な対策をしても、会社の規則や現地法の問題が解決するわけではありません。
ビジネス留学とリモートワークを両立しやすい考え方
両立を考えるなら、まず留学の目的と仕事量を分けて考えることが重要です。フルタイムの授業に加えて通常勤務を続ける場合、滞在資格だけでなく、学習時間と体力の面でも無理がないか検討します。
両立を検討しやすいのは、次の条件をすべて確認できる場合です。
- 留学先の滞在資格で、その働き方が認められている
- 必要な就労許可や申請を済ませている
- 学校がリモートワークを認めている
- 雇用主が海外勤務を承認している
- 税金、社会保険、保険、情報管理の確認が済んでいる
- 授業の出席と学習時間を維持できる
一つでも確認できない項目がある場合は、働き始める前に保留し、該当する窓口へ問い合わせてください。短期間だから大丈夫、給与の支払先が日本だから大丈夫、と考えて開始するのは避けましょう。
ビジネス留学中のリモートワークは条件付きで判断する
ビジネス留学中のリモートワークは、可能な場合もありますが、留学先の滞在資格と仕事内容を確認しないまま行うことはできません。日本企業の仕事であっても、留学先で業務を行う以上、就労や税務の確認が必要になる可能性があります。
最初に、留学先の滞在資格で認められる活動を確認し、次に学校、雇用主、税務・社会保険の窓口へ相談してください。確認が取れた範囲だけで働き、授業の出席条件と滞在資格のルールを優先することが大切です。


